みなさんこんにちは。
今回は入れ歯についてお話しします。むし歯や歯周病、事故や外傷などで複数の歯を失ってしまった場合、かみ合わせを回復しなければなりません。その場合、保険でできる範囲で行うと、どうしても入れ歯を選択することが多くなります。では、実際入れ歯とはどんなんものなのでしょうか。
入れ歯ってどれくらい咬めるようになるの?
こんな話を患者さんからよくされます。
「先生。入れ歯を入れたのに前のように咬めないです。」
不思議ですよね。例えば何らかの理由で義手、義足を使わなければならなくなったとき同じように思うのでしょうか。しかし、何故か歯に関しては前と同じように咬めるようになると思っている人が多いのです。実際は、天然歯と比べて、部分入れ歯の噛む力は30~50%、総入れ歯では約10~30%程度であることが分かっています。入れ歯でかみ合わせは回復できますが、やはり自身の歯にまさるものではないのです。
入れ歯を入れないとどうなるの?
では、歯が抜けてしまってそのままにしたらどんなことが起こるのでしょうか。
・歯の寿命が短くなる
歯は咬むとき、全体にかかる圧力を分散しています。本数が減れば、1本にかかる圧力が大きくなります。過剰な力は歯にダメージを与えてしまい、歯の寿命が短くなってしまうのです。
・歯が伸びたり傾いたりする
歯はかみ合う相手が無くなると、かみ合おうとしてとび出してきます。また、失った部分の両隣の歯は、その隙間を埋めようと、斜めに倒れてきます
・咬む機能が低下し体のバランスを崩す
歯を失ってかみ合わせが無いまま放置すると、認知症リスクはなんと1.9倍! 転倒リスクは2.5倍!になるというデータがあります。かみ合わせがなく下顎が不安定になると、体のバランスを保つことが難しくなるためです。
・口の周囲にも様々な不具合が起こる
上記以外にも、歯並びが変化し、口元の見た目が左右非対称になる。歯のないところがへこんでシワが増える。空いたスペースに頬の肉や舌が入り込み、口内を噛んでしまうことが多くなる。抜けた部分から空気が漏れ、発音が悪くなり、声の印象が変わる。など様々な不具合が起こります。
入れ歯を使わなくなる理由
せっかく作った入れ歯ですが使わなくなってしまう方もいらっしゃいます。
その理由として多いのは次のようなことがあげられます。
・違和感があり全然慣れない
・痛くて入れられなくなってしまった
・反対側で問題なく咬めるのでなくてもよい
入れ歯が合わないときどうしたらいいの?
・慣れるまで継続して使用する
初めての入れ歯の場合、必ず違和感がありますが、慣れるまで継続して使用することも必要です。入れ歯の大きさや形など慣れるまでの期間には個人差があります。一般的には数週間から2~3カ月ほど使用することで、入れ歯が入った状態に慣れていきます。日々の生活の中、できるだけ無理のない範囲で入れ歯を使い続けると、慣れるのも早くなります。
・担当の歯科医師に相談する
入れ歯を長期間入れてなかったり、痛みをずっと我慢したりしている場合は、担当の歯科医師に診てもらいましょう。実は、入れ歯の痛みは、我慢して使ってもよくなることはありません。特に作ったばかりの入れ歯は痛みがでやすく、なじむまで調整が必要です。
・自費の入れ歯にする
保険の義歯は、使える材料に限りがあり適合性や審美性に限界があります。そのため、調整を何度しても、強い違和感や痛みが取れない事があります。より自然な使い心地や見た目を求める場合は、自費の入れ歯を検討することも効果的です
歯が抜けたままの状態が長くなると、全身にさまざまなデメリットが生じてきます。口の中は日々変化しますので、こまめに調整を行うと馴染むのも早くなります。痛みや違和感を覚えたら、我慢して使い続けたり、外したままにしたりせず、早めに歯科医院に相談しましょう。